イランでのビジネス展開を考えるなら押さえておきたい5つのこと
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イランでのビジネス展開を考えるなら押さえておきたい5つのこと

イランでのビジネス展開を考えるなら押さえておきたい5つのこと

Azadi Tower in Tehran

今年初めに国際的な経済制裁が一部解除されたことを受けて、イランでのビジネス展開を見据えた各国でペルシア語翻訳の需要が急増しています。中東第2の経済大国でありながら、投資対象としてこれまで日の目を見てこなかったイランは、言わばビジネスチャンスの宝庫です。

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制裁は完全に解除されたわけではなく、国際取引や投資に対するイラン経済の開放は、当初期待されていたほどのペースでは進んでいません。それでも、イランの金融機関がSWIFT国際決済システムなどのグローバルな金融システムに再接続した今、いち早く市場に進出した企業が先行者利益を手にすることになるのは間違いないでしょう。そして、チャンスの扉を開けるには、やはり言葉が重要なカギとなります。

 

ペルシア?ファールシー?

ある言語の名称を別の言語でどう呼ぶべきか?この問題には常に議論がつきまといます。ペルシア語についても、日本では「ペルシア語」という呼称が一般的ですが、現地の呼称に倣って「ファールシー語」とすべきだという意見もあります。もともとの名称だと考えられる「ペルシア語(Persian)」は、ペルシア語でペルシア人を意味する「パールシー(Parsi)」に由来します。

「パールシー(Parsi)」が「ファールシー(Farsi)」と呼ばれるようになったのは、紀元後651年にペルシアがイスラーム共同体に征服されてからのことです。アラビア語に「p」の音がなかったことから、このような呼称になりました。1935年3月21日、政治的な理由から、英語圏の公文書で近代イラン(かつてのペルシア)の言語に言及する際には、後者の「Farsi」という表記が使われることになりました。

今日、ペルシア語学者の間には、この言語の英語名を「Persian」にしようという強い思いがあります。残念ながら、ローカリゼーション業界ではこの思いは受け入れられなかったようで、言語コードには「fa-IR」(farsi-IRAN)が使われています。

 

ペルシア語の基礎知識

ペルシア語とその方言の話者数は、全世界で約11,000万人です。ペルシア語はイラン、アフガニスタン、タジキスタンの公用語だと言われることが多いのですが、これは必ずしも正確ではありません。アフガニスタンの公用語の一つであるペルシア語はダリー語と呼ばれ、イランのペルシア語とは別の言語として扱われます。とはいえ、ダリー語とペルシア語は話し言葉、書き言葉ともにお互いに問題なく通じることを考えると、ダリー語を独立した言語と見なす動きには政治的な思惑があるようです。ローカリゼーションでは、ペルシア語とダリー語を別の言語として扱い、それぞれに翻訳チームを編成する必要があります。

Where_Farsi_Gets_Spoken.jpgペルシア語が話されている地域

同様に、タジキスタンで公用語として使われているペルシア語はタジク語と呼ばれ、文法、語彙ともにペルシア語やダリー語と非常によく似ています。決定的な違いは、タジク語ではソビエト連邦時代の名残でキリル文字が使用されている点です。ソ連解体後に各地で巻き起こった論争と同じように、タジキスタンでもロシア語アルファベットから離れるべきだという声が上がり、ラテン文字か(西側世界に近づけようという意見)、ペルシア・アラビア文字か(イランとの歴史的関係を再構築しようという意見)で分かれているようです。

 

文字の違いに注意

ムスリム共同体による征服以前、ペルシアではペルシア語の表記にパフラヴィー文字が使われていました。征服後、アラビア文字が使われるようになり、ペルシア語にあってアラビア語にはない音を表すための文字(پ [p]、چ [t͡ʃ]、ژ [ʒ]、گ [g])を加えたアルファベットが使用されるようになりました。このほかにも、ペルシア文字とアラビア文字の表記には次のような違いがあります。

ペルシア文字 アラビア文字 ラテン文字
ی ي i
ک ك k
۴ ٤ 4
۵ ٥ 5
۶ ٦ 6

ほんの数年前まで、翻訳ツールとそのチェック機能はアラビア文字にしか対応しておらず、エラーの誤検出を大量に生み出していました。アラビア語ベースのQAチェックでは、ペルシア語特有の文字を含む単語を認識できなかったため、数え切れないほどの文字列が「不正な文字」を含むものとされてしまったのです。今ではペルシア文字に対応するツールも増えてきましたが、用語データベースにアラビア文字で登録されているペルシア語が今も大量に残っていると言われています。

ペルシア・アラビア文字には、一部の例外を除いて、それぞれの文字に独立形、頭字形、中字形、末字形という4つの字形があります。

独立形 頭字形 中字形 末字形
 [h] ه   ﻫ  ﻬ ﻪ 

 

このように語中の位置で文字の形が変わるのは、ペルシア・アラビア文字がもっぱら筆記体で書かれるものだからだと思われるかもしれません。ところがタイプ入力された文書でも、前後の文字が結びつき1つの単語を形成します。

 

BBC_Persian_Home_Page.jpg

BBCオンラインのペルシア語版ニュースサイト(http://www.bbc.com/persian

現代のコンピューターはこの結合処理を自動的に行い、1つの単語として正しく整形します。しかし、このような自動処理が適さない場合もあります。接頭語の中には、最後の文字とそれに続く単語の最初の文字を離さなければならないものがあるためです。

これを解決するのが、ZWNJ(ゼロ幅接合子)と呼ばれる文字です。目に見えないスペースを2つの文字の間に挿入することにより、それらの文字が自動的に結合されるのを防ぎます。ペルシア語を扱う翻訳ツールにはZWNJ対応が必須です。

ZWNJがサポートされるようになったのは最近のことなので、用語集を使用する前に、ZWNJを使用していない用語が含まれていないかを確認した方がよいでしょう。

 

方向の違いに注意

ペルシア語は右から左へと書くRTLRight-to-Left)言語です。左から右へと書くLTR(Left-to-Right)言語である日本語(横書き)や英語とは逆になります。この違いは、ローカライズの世界でさまざまな問題を引き起こします。たとえば、LTR言語のユーザーは、ソフトウェアのボタンやメニューアイテムなども左から右に配置されるものと思い込みがちですが、RTL言語では一般的に右から左に配置されます(「保存」ボタンが右上にあるWordの画面を想像してみてください)。

ただし、こうした逆配置が必ずしも行われるとは限らないため、「右上のボタンをクリックします」といった文章を訳す場合に、翻訳者としてはどのように訳せばよいのか悩ましいところです。ソースと同じであれば右上、逆になれば左上になるわけです。よくある手としては、「上にあるボタンをクリックします」とぼかして訳すというのがあります。

ペルシア語の文書に英単語が含まれる場合もRTL言語では問題になります。製品名やブランド名は翻訳されないことも多く、そうした単語の部分だけは左から右に読まなければなりません。

読む方向が途中で変わるのは、読み手にとってストレスになります。特に、外国語に親しみのない、製品名などもペルシア語で表記してほしいと考えるペルシア語ネイティブのユーザーにとってはなおさらでしょう。文字の種類はできるだけ混ぜないのが賢明です。

 

ローカライズがもたらす価値

2000年代のはじめには、ペルシア語へのローカライズ件数はごく限られていました。また、ローカライズされた製品はいずれも、何かしらの問題を抱えていたものです(問題の多くは、アラビア語対応のツールをペルシア語のローカライズに使ったことによるもの)。その結果、ペルシア語圏のユーザーはローカライズ製品を避けるようになってしまいました。2010年頃を境に、この状況に変化が見え始めます。Google、Microsoft、Nokiaといった大企業がペルシア語への大規模なローカライズを展開したことにより、用語集、スタイルガイド、ツール、ノウハウが劇的に充実していったのです。

今では、ペルシア語圏のユーザーはローカライズされた製品やウェブページ、ソフトウェアを好んで選ぶようになりました。英語が得意な若い世代にも、ペルシア語バージョンが支持されています。

 

[マリナ・パンチェヴァ による原文へ] [編集: MLS] [o/o-i]

 

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