アジャイルなローカリゼーション:継続的なリリースプロセスで考慮すべき3つのポイント
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アジャイルなローカリゼーション:継続的なリリースプロセスで考慮すべき3つのポイント

アジャイルなローカリゼーション:継続的なリリースプロセスで考慮すべき3つのポイント

アジャイルなローカリゼーション:継続的なリリースプロセスで考慮すべき3つのポイント

ソフトウェアの開発やコンテンツの作成は、長期的スパンのウォーターフォール型リリースサイクルから、絶え間なくアップデートが繰り返されるリリースモデルへと変化が加速度的に進んでいます。アップデートされたコンテンツをすべての対応言語に翻訳して公開することは、どの企業にとっても非常に重大な課題となっています。

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あなたのローカリゼーションプロセスも後れを取るわけにはいきません。ソフトウェア開発と同様に、ローカリゼーションにもアジャイルで新しいアプローチが求められているのです。

今回のトピックは、2回の連載でお届けします。前編の今回は、目まぐるしく変化するデジタルコンテンツの世界のローカリゼーションで、「アジャイルローカリゼーション」戦略の策定がいかに有効かをご説明します。成否の鍵は、マーケット投入のスピードです。

ローカリゼーションをアジャイルモデルに

従来のローカリゼーションは時間のかかるプロセスです。ローカライズ対象の選定、コンテキストや参考/指示書のとりまとめ、リソース調整やファイルのハンドオフ、翻訳、品質チェック、納品用ファイルの作成まで、一般的に数日を要します。

こうしたステップはどれも必要な作業ですが、多くは自動化を通じて、時間を短縮したり、手作業によるプロセスを減らしたりできます。自動化に加え、ハンドオフ回数や繰り返し作業の削減もアジャイルなワークフロー実現に不可欠な要素です。アジャイルローカリゼーションのアプローチを取り入れることで、全体的に無駄を省くことができます。また、マーケットやエンドユーザーのニーズの変化にも迅速に対応できるようになります。つまり、有効なコンテンツをより速くマーケット全体に届けられるようになるのです。

これは夢物語ではありません。成熟したローカリゼーションプログラムはすでに定着しています。私は、コンテンツ管理システム(CMS)や翻訳管理システム(TMS)への移行をはじめ、ローカリゼーションサイクルのプロセスが数分のうちに完了するのをこれまで実際に見てきました。 

しかし、ローカリゼーションプロセスの自動化を進め、全アップデートコンテンツを常に翻訳し続けることが必ずしも適切とは限りません。継続的な開発とアジャイルローカリゼーションには大きな利便性がある反面、品質の完成度では犠牲になるところもあります。また、ソフトウェア開発と同時進行でローカリゼーション作業が進められ、頻繁に更新される小さな単位の文字列が作業対象となるため、変更や再作業も多くなります。エラーや、ユーザーから絶えず寄せられるフィードバックによる小規模改良部分も再作業対象になります。最も重要なのは正常に機能するソフトウェアを提供すること。「アジャイル」のありようにも、まだ改善の余地があると言えそうです。

さらに、アジャイルなローカリゼーションでは一定のリスク、たとえば誤りを恐れない姿勢とマインドが求められます。コンテンツをマーケットに届けるスピードを優先させる中、誤りが残ってしまうのはある意味必然です。LinkedIn共同設立者リード・ホフマン氏は、「最初のバージョンに恥ずべき点がなかったと言うなら、それは発表が遅すぎたということだ」と述べています。

重要なのは、従来以上に速く簡単に誤りを修正できるようにして、誤りによる問題を減らすことです。この手法は、翻訳の誤りがビジネスにおいて大きな問題にならないケースに最も有効です。

小規模なアップデートを繰り返しながらエラーを効率的に修正するには、処理を細かく分割して負荷を減らすことが不可欠ですが、バージョン管理が煩雑になったり、頻繁なリリースが逆に負担になったりする恐れもあります。こういった事態に対処するには、可能な限り多くのステップを自動化するか、プロセスを見直してステップ全体を取り払うかのいずれかを選択する必要があります。こうしたアプローチによって初めてアジャイルなローカリゼーションは真の意味で機能し、今までにない速さでソフトウェアアップデートや新しいデジタルコンテンツをマーケットに提供できるようになるのです。

ただし、ローカリゼーションがアジャイルだからといって、ずさんな作業はご法度。チームは常にベストを尽くす必要があります。エラーが発見されても、しかるべきタイミングで変更できるので、慌てずに対応しましょう。

考慮すべき3つのポイント

ローカリゼーションをアジャイルなモデルに移行するとは、ソフトウェアの開発やコンテンツの作成とほぼ同時進行でローカリゼーションを進めるという考え方にシフトすることです。その際、ローカリゼーションのコスト、リズム、コンテキストという3つの鍵となる要素について再検討する必要があります。

1. コスト

まず、ローカリゼーションをアジャイルなモデルにするには、コストモデルとコスト管理方法を変える必要があります。

どのタスクにも処理ごとに付随して作業負荷が生じ、最も重要な人的資源である翻訳者にも考慮すべき制約があります。翻訳者は、作業の開始時に作業内容を把握し翻訳対象のコンテキストを理解し、自身で管理するチェックリストを確認しながら、正確に翻訳を行わなければいけません。一連のステップを実行するには時間という問題が経済性の面で常につきまといます。はじめのうちは時間がかかるかもしれませんが、慣れてくるとスピードも上がります。

こうした制約について、すぐに実践できる解決策としては、翻訳タスクに「集中する」までに必要な時間を短縮することが挙げられます。具体的には、小さくて類似性のあるタスクをまとめ、製品のコンテキストを十分に準備した上で翻訳者に発注することです。

同じ翻訳者(または少人数のチーム)を活用するという方法もあります。製品に関する知識を深めておくと、すぐに対応できるからです。また、割り当てられた作業時間内で翻訳者が対応できる分量を考慮しましょう。翻訳コストが予測しやすくなり、各処理を追跡管理する時間など、付随して発生する作業コストを削減できます。規模が大きなタスクに残業代を支払ったり、優先順位の低いタスクを次の期間に回したりする方法もあります。

さまざまな経験や知識を持ち合わせ、連絡への応答が早い翻訳者を起用するという方法もあります。ピーク時と閑散時のボリュームの差を効果的に管理できるので分量の増減に柔軟に対応でき、迅速な対応が可能になります。案件によっては提供資料だけでは十分な製品知識を得られない場合もあるので、有効なコンテキスト資料の提供に投資し、ブランドの品質や要求が満たされるようにする必要があります。

さらに、コストの算出において処理時間は極めて重要な要素です。処理時間とは、仕事の要件定義から翻訳者へのハンドオフ、納品物の受け取りまで、タスクが完了するまでにかかる時間の合計です。こうしたコストを下げるのに有効かつ最もシンプルな方法は、コンテンツを理解できる環境で翻訳することです。その場合、処理コストはほぼゼロになります。翻訳プロセスのさまざまなステップを省くことができ、ファイルの転送も自動化できます。

自動化によりローカリゼーションプロセスの即応性は飛躍的に高くなる一方、そのプロセス確立には莫大な費用がかかります。仕様の変更コストも高く技術的な困難もあるなど、難しい問題に直面する可能性にも常に留意ください。プロセスワークフローそのものをコンテンツと同じように適応性のある、柔軟性に優れたものにすることで、アジャイルな自動化プロセスも可視化することができます。長きにわたって盤石なプロセスや技術というものが存在しないからこそ、あらゆる選択肢に対して柔軟な体制を選択し続けることが重要です。

2. リズム

コストモデルはアップデートのサイクルのリズムに沿ったものでなければなりません。コンテンツアップデートの頻度や、ローカライズにどれくらいの時間と費用がかかるかも検討しましょう。それによって、ビジネスモデルも大きく変わってきます。

アジャイルな開発チームの多くは2週間単位の「スプリント型」サイクルで作業し、翻訳にも自然で規則的なリズムが生まれます。しかし、1日のうちに小規模なコード変更が何度も発生するチームもあります。また、コンテンツの世界では、マーケット変化に呼応して発生するアップデートには可能な限り迅速に対応しなければなりません。いずれにしても、失敗のコスト(ここでは遅延コスト)はコストの算定時に織り込んでおく必要があります。

頻繁なアップデートに対応するためのローカリゼーションサイクルの決定要因には以下のようなものがあります。

  • 変更がユーザーエクスペリエンスにもたらす影響
  • アップデートによって生じる追加コスト(処理コスト)
  • 翻訳者に必要なオリエンテーション時間
  • 遅延による追加コスト

たとえば、利用者利益が少ないのに処理コストが高い場合、小さなアップデートを常にローカライズすることは有益とは言えません。定期的なメジャーアップデートで対応するのが最も効率的です。

一方、翻訳に必要なコンテンツを自動的に抽出したり、コンテンツ管理システムで直接翻訳したりできる場合は、最小限の労力で、頻繁に行われるマイナーアップデートに対処できます。

結局のところ、投資効率はマーケットへのより速いリリースのみよって得られるものではありません。自動化の導入コストと、コンテンツを集積して公開するまでに要する人的労力を比較し、さらに不可抗力で発生した誤りの修正に要する時間を加味して算出されるべきものです。自動化に大金を投じながら、作業が数時間しか短縮できなければ導入の意味はありません。自動化によって、これまで夢想だにしなかった新しい作業構造やプロセスが見えてくることもあります。投資効率だけを考えるのではなく、こうした新しい流れも視野に入れ、日々進化する技術も組み入れながらビジネスの展開を検討する必要があります。

3. コンテキスト

正確なローカリゼーションのため、翻訳者はコンテキスト、つまり製品、マーケット、そしてベースとなる消費者について十分理解する必要があります。

類似案件に多く対応して背景知識を蓄積することで、小さな仕事も正確にこなし、オリエンテーションにかかる時間を短縮できます。ただし、まったく新しい仕事の場合は、通常より時間を要します。

小規模タスクを迅速かつ大量に処理するには、翻訳開始時に必要なコンテキストがすべて揃っていること、もしくは製品に関する幅広い知識を翻訳者が持ち合わせていることが肝要です。こうした環境作りを通じて、オリエンテーションや校閲時間を短くすることができます。この点から、翻訳スケジュールをブロック単位で考えることの重要性も認識できます。

 

コストモデル、アップデートサイクルのリズム、コンテキストのプロセスを見直すことで、アジャイルなローカリゼーションモデルを健全に運用し、多くのマーケットのエンドユーザーにコンテンツをより速く届けられるようになります。

本連載の後半では、アジャイルなローカリゼーションを正しく導入するためのヒントを紹介する予定です。それまでの間、業界で最も成熟したローカリゼーションモデルの1つとされるMicrosoft Officeが、どのようにして現在の継続的なローカリゼーションモデルへとシフトしたかについてもぜひご一読ください。


 [編集メモ:この記事は、2017年11月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。エリック・ヴォートよる元の記事はこちらからご覧いただけます。] [編集: MLS] [o/i]

 

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