注目すべきは金額ではない?ローカリゼーションの新たな価格体系とは
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注目すべきは金額ではない?ローカリゼーションの新たな価格体系とは

注目すべきは金額ではない?ローカリゼーションの新たな価格体系とは

注目すべきは金額ではない?ローカリゼーションの新たな価格体系とは

製品やサービスの価格、知覚価値をめぐる議論には終わりがありません。そこには個人の好み、文化の違い、社会経済的要因などが絡んでいるからです。ならば、言語サービスプロバイダー(LSP)とローカリゼーションサービスの買い手は、どこに価格の落としどころを見つけ、価格競争の中でwin-winな関係を築くことができるのでしょうか。ポッドキャストGlobally Speakingでは先日、ローカリゼーション業界に長く身を置くAnne-Marie Colliander Lind氏(アン=マリー・コリアンダー・リンド:Nordic Translation Industry Forum共同主催者、LocWorldマーケティングマネージャー、コンサルティング会社Inkrea.se設立者)をゲストに迎え、この問題についてディスカッションしています。

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ワード(文字)単価は時代に即していない

翻訳業界では、ワード単価(言語によっては文字単価)による価格設定が習慣として根強く残っていますが、Anne-Marie氏はこの単価ベースの価格設定に疑問を投げかけています。まず、翻訳サービスの単価はこの25年間ほとんど変わっていません。これは、インフレによりあらゆる物価が上昇する一方で、翻訳テクノロジー(翻訳メモリー、翻訳支援ツール、翻訳管理システム、コンテンツ管理システム、機械翻訳など)が進化し、生産性が劇的に向上したことによります。つまり、物価上昇のプラスと生産性向上のマイナスで相殺され、上がることがなかったわけです。

では、どのLSPも同じ価格で売っているのかといえば、答えはノーです。Anne-Marie氏によれば、競争入札や相見積もりで競合に勝つために、LSPは限界利益が出るギリギリの価格を提示せざるを得ないことも少なくないと言います。サービスの買い手は、極端な低価格には疑いの目を向けるべきでしょう。品質が犠牲になるおそれや、翻訳者などに適切な報酬が支払われない可能性があるからです。

このトピックに興味がある方は、弊社ブログ記事「単価ベースの価格設定が、ローカリゼーションの買い手を惑わす理由」をご覧ください。

重要なのは「価格」ではなく「価値」

ローカリゼーション業界の成熟にともない、ワードベースの価格モデルから遠ざかりつつありますが、これには理由があります。

LSPは翻訳そのものにとどまらず、マーケットリサーチ、多言語SEO、コンテンツ開発、トランスクリエーション、プログラムマネージメント、マネージドチームなど、さまざまなサービスを提供します。こうしたサービスはグローバル展開を目指す買い手のニーズを満たすものであり、グローバルマーケティングとローカリゼーションのワンストップソリューションとしてパッケージ化されれば、顧客にとってはまさに至れり尽くせりです。

Anne-Marie氏は、LSPにこうアドバイスします。「顧客のニーズに合わせて、サービスを柔軟に組み合わせましょう。売りたいように売るのではなく、顧客が買いたいように買えるということが重要です」。買い手の立場からすれば、これは当然のことでしょう。価格は、何ワード翻訳したかではなく、どのようなサービスが提供されるかで決めればよいのです。

ローカリゼーションの世界で起きているもう1つのパラダイムシフトは、「量」より「質」です。選択した言語でコンテンツのすべてを翻訳するのではなく、データや分析に基づいて戦略的にプランニングを行い、最適なサービスを組み合わせてグローバリゼーションの手法をカスタマイズします。たとえば、どの市場にどのようなコンテンツでアプローチすべきかというリサーチから、ターゲット市場に適したローカリゼーション戦略の策定、パフォーマンスのモニタリングまでを、LSPとのパートナーシップにより実現することも可能です。グローバルコンテンツのライフサイクル全体をLSPが管理する場合の価格モデルは、単純なワードカウントのみで見積もることはできませんが、これにより得られるメリットは計り知れません。

新しい価格モデル

ポッドキャストGlobally Speakingのモデレーターは、新しい価格モデルを提案しています。これらがローカリゼーション業界の新常識となるかもしれません。

  • 【サブスクリプションベースのサービス】ボリュームに応じて料金を前払い。作業量にむらがなく、急ぎのコンテンツアップデートもない、小規模なプログラムに最適。
  • 【継続的デリバリー】アジャイルソフトウェア開発と同じように、各スプリント(短いサイクル)で一定量の作業を実施。価格と納品物の量は毎回一定。
  • 【機会費用に基づく価格設定】さまざまなソリューションのコストを計算し、それぞれのROI(投資利益率)を提示。

機会費用に基づくモデルついて説明しましょう。たとえば、ある会社が20の市場で製品を販売しているのに、カスタマーサポートのコールセンターは1言語のみで対応しているとしたら、残り19の市場の顧客をどのようにサポートすればよいでしょうか。

  • オプション1:対応言語の話者ではない顧客はサポート対象外。クレームや否定的なレビューは静観。
  • オプション2:各国でカスタマーサービスエージェントを大量採用し、顧客が使用する言語で電話対応を行う。
  • オプション3:ユーザーが無料で利用できるサポート資料をできるだけ多くローカライズする(FAQ、ウェブサイト、製品に付属するヘルプ、動画、チュートリアル、ユーザーガイドなど)。問い合わせが減ったかどうかなど、ローカライズの効果測定を行い、適宜調整する。

オプション1や2を選択した場合のコストや損失(人件費、低評価など)と比較して、オプション3の価格を評価してみましょう。さらに、顧客満足やロイヤリティの向上、リピーターの確保といったおまけがついてくるのであれば、オプション3はまさに「プライスレス」なサービスと言えそうです。

上手にLSPを味方にする

Anne-Marie氏は、ローカリゼーションの買い手に貴重なアドバイスをしています。それは、購買プロセスにおいてLSPと綿密なすり合わせを行い、グローバル展開の目標、優先事項、想定される言語ニーズとボリューム、重要な業績指標などをよく理解してもらうということ。こうした情報を把握することで、LSPは最大限のROIをもたらすソリューションを提案できるのです。

さらに、LSPには「固定価格表を公表しないこと。ワード単価にのみ基づく価格交渉をしないこと」と忠告しています。代わりに、サービスやソリューションに磨きをかけて価値を高め、それに見合った価格を自信をもって設定しましょう。

 

Anne-Marie氏のすべての発言は、こちらでお聞きいただけます。


[編集メモ:この記事は、2017年9月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。ジル・ポラニシア による元の記事はこちらからご覧いただけます。]  [編集: MLS] [o/i]

 

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