アフリカのロングテール言語のローカリゼーション:課題と見返り
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アフリカのロングテール言語のローカリゼーション:課題と見返り

アフリカのロングテール言語のローカリゼーション:課題と見返り

アフリカのロングテール言語のローカリゼーション:課題と見返り

アフリカ市場向けの翻訳は、言語の多さひとつとっても一筋縄ではいきません。まずは需要の高いフランス語、スペイン語、アラビア語、ポルトガル語、そしてもちろん英語からローカライズするのがセオリーとはいえ、スワヒリ語、コサ語、ズールー語、アムハラ語などの言語が根強く使われる地域も決して少なくはありません。

ロングテールに分類されるこれらの言語のうち、どれを優先すべきなのか?翻訳の難易度は?そもそも、翻訳する価値はあるのか?今回の記事では、そうした問いへの答えをまとめてみました。

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アフリカの主要言語(Moraviaが扱っている言語)

以下のリストは、アンケートや調査の結果ではなく、Moraviaでアフリカの言語を扱っているプロジェクトマネージャーからの情報に基づいて作成しました。つまり、実際にお客様の需要がある言語です。

言語

主な話者人口*

使われている主な国**

アフリカーンス語

1,500~2,300万人

南アフリカ、ナミビア

アムハラ語

2,580万人

エチオピア

ハウサ語

3,500万人

ニジェール、ナイジェリア、ガーナ、ベナン、カメルーン、コートジボワール、トーゴ

イボ語

1,800万人

ナイジェリア、赤道ギニア

コサ語

820万人

南アフリカ、レソト、ジンバブエ

ズールー語

1,000~1,200万人

南アフリカ、ジンバブエ、レソト、マラウィ、モザンビーク、スワジランド

スワヒリ語

7,500万~1億1,500万人

タンザニア、コンゴ民主共和国、ケニア、モザンビーク、ブルンジ、ルワンダ、ソマリア、ウガンダ、コモロ、マヨット

北ソト語

470万人

南アフリカ

ツワナ語

500万人

ボツワナ、南アフリカ、ジンバブエ、ナミビア

ウォロフ語

420万人

セネガル、ガンビア、モーリタニア

ヨルバ語

2,800万人

ベナン、ナイジェリア

*各言語の話者人口と、使われている主な国に関する出典はWikipedia および Omniglot
**後述の第4項も参照。

アフリカ言語へのローカリゼーションに伴う課題

  1. 標準化の遅れ。 アフリカの言語は、成文化されていないものが大半です。そのため、語法について何が正しく何が間違っているのかの合意が得られていません。また、そうした言語には一定の概念を表す単語、特に技術用語が不足しています。日本語では、日常生活で利用するコンピューター関連の用語にはすでに定訳が存在していますが、アフリカの言語では、まだ固まっていないことが多いようです。ときとして、これが翻訳者とレビューアーとの間で議論の的になります。双方とも、自分の母語や方言の影響を受けるため、訳語について合意に至るのが難しいことがあるからです。
  2. 人材の不足。 アフリカの翻訳・ローカリゼーション業界は、いまだ発展途上です。そのため、プロの翻訳者を確保するのにも難航します。現在翻訳の仕事をしている人たちも、副業としてやっていることが多いようです。ソース言語とターゲット言語のどちらにも精通し、必要なツールを使いこなせる人材となると、本当に貴重です。こうした理由から、成熟した翻訳市場では当たり前に行われている、翻訳の買い手が翻訳者と直接仕事をするということが難しくなっています。
  3. インフラの問題。 停電が頻繁に起こり、もともと高速ではないインターネットもたびたび止まる。それが、アフリカの翻訳者にとっては日常茶飯事です。そもそも、データ接続には膨大なコストがかかります。フリーランスの翻訳者が必要なツールのライセンスを購入できないこともあり、ファイルのやり取りにも支障が出るため、品質や作業効率への影響が避けられません。
  4. 言語の優先順位。アフリカの言語は膨大な数にのぼり、各部族が独自の方言を使っているため、言語の選択がしばしば問題になります。Moraviaの言語サービスグループマネージャーを務めるマリナ・パンチェヴァはこう語っています。「ローカリゼーションのターゲットとしてどの言語を選ぶかは、簡単ではありません。言語と市場(国)が、必ずしも対になるとは限らないからです。たいていの場合、1つの市場に複数の言語があり、1つの言語で複数の市場が存在します」

上の表では、主要なロングテール言語(話者人口は第1言語としての概数のみ記載)を挙げていますが、第2言語として使っている話者人口までを含めると、かなり広い範囲が網羅されています。まずは、これらの言語をターゲットにするところから始めるとよいでしょう。その他のロングテール言語のデジタル世界における存在感が無視できないほど大きくなるまでは、おおむねこれで間に合うはずです。

 

アフリカ向けにローカライズする理由

端的に言えば、成長率の高さです。2016年、アフリカ経済の年間成長率は3.7%に達すると見込まれ、2005年以来2桁の経済成長を遂げているエチオピアなど、大きな期待を集める国が台頭してきています。これほどの成長を続けているアフリカ経済にいかにして参入するか――簡単ではないことは認識しつつ、多くの企業が模索を始めています。アフリカの発展と人々の幸せのために、翻訳とローカリゼーションが果たす役割は大きいと言えるでしょう。

アフリカ向けのローカリゼーションがどれほど難しくても企業が二の足をふまない背景には、その課題が未知のものでもアフリカ固有のものでもないという単純な理由があります。アジアなど他の地域でも、それぞれの新しい言語に対応してきた経験がすでにあるからです。そのほかにも、アフリカ向けの翻訳を後押しする要因はいくつかあります。

> アフリカの市場で、デジタル化とローカリゼーションが進みつつある
  Google、Microsoft、Facebookなどの企業が、アフリカの言語で製品やサービスを提供し始めています。Google翻訳には、最近追加されたコサ語をはじめとして、アフリカの言語が数多く追加されました。Microsoft翻訳にも、アフリカーンス語のテキストサポートが追加されていますが、アフリカーンス語はInstagramの翻訳機能でサポートされている唯一のアフリカ言語でもあります。Google Playは、1年以上前からアフリカの数か国でもサービスを開始しており、書籍、音楽、映画が次々と追加されています。このような発展があると、各地域の市場はグローバル経済と結び付きやすくなり、その地域の言語を使った展開が促されるものです。
  そうなると、他の企業にも同じような言語のサポートが期待されるようになります。特に、ハードウェアのエコシステムが整備されるほど、その期待は大きくふくらみます。マッキンゼーの推計によると、2025年までにサハラ以南の10億に近い人口のうち半分がインターネットにアクセスできるようになり、そのうち3億6,000万人ほどがスマートフォンからアクセスするようになるということです。この予測は、Mozillaが進めているような手頃な価格のスマートフォンによって着実に実現されつつあります。
> アフリカのアイデンティティは文化や言語と分かちがたく結び付いている
  アフリカ諸国が、これまでにない経済力と政治力を手に入れるようになるにつれ、人々は自分たちのアイデンティティを強く打ち出したいと願うようになります。こうした新たな「目覚め」は、経済にも影響を及ぼし、自分たちの言語で商品やサービスを利用したいという需要につながります。
  利用者のそういう心情を顧みない企業は評価を落とし、ロイヤリティを失いかねません。アフリカの消費者も、他の地域の消費者と同様、購入を決めるとなれば自分たちの言語で情報を得たいと思うものです。自分たちの言語で示された情報が信頼を生み出すというのは、特に難しい理屈ではありません。
> 地元の起業家が成功しはじめている
  メディアでは、アフリカで作られたアプリや、アフリカ生まれの企業が、知り尽くしたローカル市場のニーズに独自の方法で応えているというニュースをよく紹介しています。たとえば、ケニアでは家畜の世話に使う「i-Cow」や、ウガンダでは患者をリモートでモニターする「Econet」などがあります。ウガンダの「Yoza」は、洗濯のニーズと移動洗濯屋を結び付ける、Uberに似たサービスです。もちろん、国境を越えて人気を博しているM-Pesaのようなサービスも始まっています。
  地元企業の進出で、天然資源を中心とする昔ながらの産業とは違う新しい産業がアフリカでは広がりつつあります。ゲーム業界がその代表です。たとえば、Kiro’o Gamesはカメルーン初のゲーム制作会社です。わずか100ドルの資金で起業しましたが、50,000ドルの資金調達に成功。アフリカの民間伝承や神話をベースに、アフリカではおなじみの英雄オーリオンが登場するロールプレイングゲームを開発しました。
  ここから学べるのは、アフリカの市場もアフリカの起業家も、侮れないということです。みなさんが考える以上に、市場の最新事情にもけっして後れをとっていません。ローカリゼーションが遅れれば、それだけ後塵を拝することになります。

> 放っておけば、他社にチャンスを奪われる
  ローカリゼーションは、模倣ビジネスが幅をきかせるのを防ぐ手段にもなります。革新的なアイデアを持つ企業があれば、こうした企業からアイデアを借用して海外で成功しようとする企業もあるというわけです。タイミングよく製品をローカライズしてグローバル市場に参入しなければ、他社に先を越されてしまうかもしれません。IT、携帯電話、エンターテインメントといったB2Cの製品やサービスは、どの業種よりもローカリゼーションが積極的に進められています。自社の製品がこういったカテゴリーのいずれかに該当するのであれば、翻訳を避けては通れません。

アフリカ市場に向けたローカリゼーションの規模と範囲がどれほど大きくても、臆することはありません。複数の国を広くターゲットとしてカバーできる4~6言語から始めてみましょう。そこで得た経験を蓄えていけば、短期間でさらにその先へと拡大していけるはずです。

翻訳とは、各地域の文化に対する敬意を示す手段であると同時に、消費者にブランドを身近に感じてもらえるきっかけにもなります。言語は障壁ではなくチャンスであり、活用しない手はありません。

 

 [編集メモ:この記事は、2017年7月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。ヴィジャヤラクシュミ・へグデよる元の記事はこちらからご覧いただけます。] [編集: MLS] [o/o-i]

 

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