ベトナム市場におけるマーケティング: その課題と潜在価値
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ベトナム市場におけるマーケティング: その課題と潜在価値

ベトナム市場におけるマーケティング: その課題と潜在価値

Marketing to Vietnam

当社ブログの新企画、「国別ミニマーケティングガイド」シリーズの第1回目をお届けします。このシリーズでは、人口統計データ、特定業界や企業の好不調、消費者嗜好など、さまざまな観点から現在の市場の状況を見ていきます。顧客の嗜好がサービスや製品のローカライズにどう影響するかなどにも触れていくことにしましょう。最初に取り上げるのはベトナムです。

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ベトナムが1980年代と1990年代の自由化改革を経て世界貿易機関(WTO)に加盟し、経済を開放したのはわずか10年ほど前のこと。しかし、一人当たりの国民所得ではすでにインドを凌ぐ存在です。2016年の上半期、外国直接投資額は113億ドルに達し、昨年同期比105%の伸びを見せています。この目覚ましい成長の端緒となったのは、貿易にまつわる世界情勢の変化です。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)やEU・ベトナム間の自由貿易協定は、その代表的な例と言えます。

今や人口がスペインの約2倍の9,400万人以上に膨らんだベトナム。国民にもあらゆる新興経済国に共通する特徴が見られます。より良い生活を送るために優れた製品やサービスを求め、子供の教育や、かつては手の届かなかった消費財などに積極的にお金をかけるという点です。

国民の60%以上が地方に暮らすベトナムですが、購買力の大きな部分は南のホーチミン市と北のハノイが占めています。価格が購買にあたって重要なポイントであることは当然として、高まりつつある品質意識については意外に知られていません。

世界トップブランド企業100社の約半数がベトナム語のWebサイトを提供していることからも、大手企業がベトナム市場をいかに重視しているかが見て取れます。では、ベトナムでビジネスを始めるにあたり、あらかじめ意識するべきことは何でしょう? 国内や国外の同業他社が、どのような企業努力をしているか、皆さんはご存知ですか?

現地や近隣諸国のアプリがグローバル企業を凌ぐ好調

現在ベトナムで使われている電話機は1億3,000万台以上、うち3,200万台がスマートフォンとのこと。そう、今ベトナムではアプリ経済が”熱い”のです。インターネット接続の遅さも阻害要因にはならないようで、Google Playストアにおけるダウンロード件数で、ベトナムでは昨年、史上最速の年度比上昇率を記録しました。

ゲーム好きの国柄もあり、ダウンロードされたアプリの半数はゲームでした。ベトナムでは、現地のゲームメーカーが根強い人気を誇っています。ZingPlayは、2016年第1四半期にGoogle Playからのダウンロード件数でトップ10入りを果たしていますし、Google PlayとiOS向けのApp Storeを合わせると、2016年の第1四半期にダウンロード件数でトップ10位入りしたゲームのうち、3つが現地ゲームメーカーの開発によるものです。2014年に口コミで人気が広まったFlappy Birdは、あまりの白熱振りに、開発者当人がアプリストアでの配信を中止する異例の事態となりました。

国内のゲームメーカー、VNGは、現地ならではのノウハウを活かしたソーシャル、エンターテイメント、ゲーム関連のアプリを専門としており、ZingPlay-TiếnlênやZingPlayTáLảといったカジノゲームやカードゲームのヒット作を次々と生み出しています。同社はまた、ベトナム国内最高のダウンロード件数を誇るメッセージングアプリ、Zaloも所有しています。VNGが近い将来、国外の同業企業Tencentのようにフルプラットフォーム対応のメッセージングサービスを提供するかも注目されるところです。

国内市場に精通する現地企業と競合するグローバル企業は厳しい戦いを強いられ、激しい競争が繰り広げられるライドシェアリングアプリ市場でも同じ課題が見てとれます。マレーシアで設立されたGrabは、ベトナムではUberの強力なライバルであり、App StoreとGoogle Playを合わせたダウンロード件数では、Uberを抑えて国内のライドシェアリングアプリのトップを維持しています。同社の成功の鍵となったのは、製品の「ローカライズ」。Grabは、バイクのライドシェアリングサービスを通じて手早く安価に移動できる手段を地元住人に提供し、さらに現金払いにも対応しています。

一方のUberは現地タクシー組合から強い反発を受けています。ドライバーのサポートや広告宣伝に多額の資金を投じてはいるものの、中国市場から撤退した経緯からも、持続可能なビジネス戦略とは言いかねます。

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Uberのライドシェアサービス(ハノイ) 出典: www.uber.com/cities/hanoi/

Mコマース市場でも、現地アプリが近隣諸国の同業者としのぎを削っています。電子機器の店舗販売を行うGioi Di Dongは、2015年に業界最高のダウンロード件数を記録しました。他にも、ChoTot.vn(消費者間取引[C2C]系マーケットプレイス)や、Sendo(Eコマースサイト)のような現地アプリが堅調な展開を見せています。こうしたアプリも、LazadaやShopee(C2Cマーケットプレイス)など近隣諸国の企業との競合を免れることはできません。

検閲制度を横目に超デジタル化したベトナム

最近のトレンドと足並みを揃えるように、ベトナムではスマートフォーンユーザーの大半が、手元のスマートフォンからインターネットにアクセスしています。数あるソーシャルメディアプラットフォームの中でも極めて優勢なのがFacebookです。ベトナムでは見知らぬ人からの友達リクエストを承認することが習慣化しており、Facebookは事実上、真のソーシャルネットワーキングツールとなっています。Facebookはまた、オンライン広告でも国内トップの収益を上げています(Googleの1億ドルに対してFacebookは1億5,000万ドル)。

ただし、社会や政治に関わる話題は、なにかと議論の種になりやすいものです。ベトナムには厳しい検閲制度もあるので、マーケティングでは、こうした話題に触れない方がいいでしょう。むしろ、映画や音楽、有名人の話題が頻繁にオンライン検索されていることを考えると、まずは現地のトレンドを把握することが肝心です。

Eコマース成功の鍵は支払い方法と強力なブランド力

この1年で、ベトナムの電子小売業界の総売上高は40億ドルに達しました。Google Playのショッピング部門の売上高は、前年比で200%の伸びを見せています。しかし、2016年にはこの成長ぶりがゆるやかになるかもしれません。というのも、ベトナムの発展が安定期を迎えつつあるからです。

ベトナム貿易省のEコマース部門が実施したアンケート調査によると、消費者の多くは商品の品質に満足しておらず、オンライン決済の手順にも不満を感じているそうです。ベトナムでは、オンラインショッピングで購入された商品の代金の80%以上が、未だに代金引換によって支払われています。

これからの電子小売業者は、顧客の満足度を高めるために大規模なマーケティングキャンペーンを行って自社のプラットフォームを宣伝し、倉庫にも多額の投資を行う必要があるでしょう。この種の施策は、現地企業ではなく、外資系企業の得意とするところかもしれません。

Lazadaなどの大手Eコマース企業では、オンラインでの分割払いも利用できます。Mobile World JSCも支払い方法には柔軟に対応しており、利用者は電話で分割払いの可否を確認可能です。店舗に足を運び、書類を何枚も提出してさんざん待たされる必要もありません。

欧米企業を歓迎 - 中国には食傷気味

アジア諸国の中でも特にベトナムは、中国を低く評価しています。ベトナムは、「隣の大国」中国の影響から逃れることはできません。しかし、品質への意識が高まっている今、ベトナムでは韓国や日本をはじめ、欧米のブランド企業の製品やサービスが以前よりも歓迎される傾向があります。たとえば、Hyundaiのトラックは中国製より高価であるにもかかわらず、ベトナムでは好調に売上げを伸ばしています。その理由は品質の高さ。価格を最重要視する消費者も、品質のためなら目をつむるというわけです。

もちろん、安価な中国製品を歓迎する市場もまだありますが、ベトナムが本物志向、上質志向へと傾いていることは明らかです。かつては欧米に対する偏見からか、共産国との国交関係を重視し、社会主義国然としていたベトナムですが、当時と比べると、これは大きな変化です。

外資コーヒーチェーンには高い壁

ベトナムのコーヒーチェーン市場は、15~18%の成長率が見込まれています。外資系企業にとって、簡単に見逃せない市場ではありますが、一方で大きな課題もあります。

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Cà phê: Starbucksがベトナム一号店をオープン(2013年) 出典: www.starbucks.com

ベトナム国民は、コーヒーに強いこだわりを持っています。彼らの好みは、どろりとした濃い目のフルボディ。ベトナムのコーヒーの歴史は長く、人々は生活に根付いたコーヒー文化に誇りを持っています。彼らは屋外の椅子に腰かけ、会話を交わしながら、時間をかけてゆっくりとコーヒーを楽しみます。国民の間ではStarbucksなどの外資系コーヒーチェーンが歓迎されていますが、現地ブランドも負けてはいません。価格やベトナム人の味覚にあった商品、そして、店舗数の多さなどを強みに、外資系チェーンに真向から対抗しています。

バイクの国 – 大型車需要も徐々に増加

バイクはベトナムで最も一般的な移動手段です。登録台数は約4,500万台に上り、道路という道路がバイクであふれかえっています。ベトナムは売上高で中国、インド、インドネシアに続く、世界最大規模のバイク市場です。あのBMWでさえ、この事実を無視できず、ベトナムでのバイク販売に乗り出しています。

しかしながら、ベトナムの車両売上高もこの1年で55%増という記録を打ち立てました。今年も緩やかながら、売上高はさらに伸びる見込みです。

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ハノイの旧市街を埋め尽くすバイクの群れ写真提供: iStockphoto

高級品市場の微妙な事情

ベトナム版ELLE誌の編集長、Nguyen Thuy Linh氏によると、ハノイの人は高級品にお金を投じる傾向が強く、サイゴン(旧ホーチミン市)の住人は最新のトレンドや着心地の良さを重視するそうです。「ハノイには四季があるので、その分、着こなしのバリエーションが広がります。一方ホーチミンには、雨季と乾季の2つしかなく、一年中暑さが続きます。そのため、薄い生地やシンプルなデザイン、鮮やかな色使いが好まれます。コートやブーツも必要ありません」とNguyen氏は述べています。

ベトナムのファッション小売業の上位層を占めているのは、ごく一部の有力企業です。つまり、ベトナムに進出する外資系ブランド企業は、限られた現地企業の中から提携先を見つけなければなりません。こうした事情に精通する人の多くは、ベトナムのファッション市場が今一つぱっとしない理由として、この選択肢の少なさを挙げています。もちろん、ブランド認知度の低さなど、理由はほかにもさまざまです。

それでもまだまだポテンシャルの高いベトナム市場。高級ファッションブランドは、超富裕層への売り込みを続けつつ、メディア広告にも投資し、より幅広い顧客層にアピールしていく必要があるでしょう。一方、中堅ブランドは、2大都市以外の地域にも展開することでチャンスを見出せるかもしれません。特に、ダナンやニャチャン、ブンタウなどの海沿いの街が狙い目ではないでしょうか。

今後のベトナムに期待

国外からの投資が拡大し、消費パターンも多様化しているベトナム。今後は製品やサービスを選択、購入する国民の目もますます肥えていくことでしょう。現地企業には、地元の顧客のニーズに精通しているという強みがありますが、グローバル企業は、それを一から学ばなければなりません。それでも、消費者の間では外資系ブランドの認知度が高まっており、やがてはそれが強みになっていくことでしょう。困難はあれど、大きな成果が期待できる市場と言えます。

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[ヴィジャヤラクシュミ・へグデ による原文へ] [編集: MLS] [o/o-i]

 

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