消えゆく文字を後世に伝えるために
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消えゆく文字を後世に伝えるために

消えゆく文字を後世に伝えるために

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言語とはきわめて複雑なものです。そして文字、つまり書きことばは、コミュニケーションの手段であると同時にアートでもあります。テクノロジーの発達により「常につながる」現代において、失われようとしている文字を救うべく立ち上がったのがTim Brookes(ティム・ブルックス)氏です。

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ブルックス氏は消滅の危機にある言語を守るため、Endangered Alphabets Projectを創設。ここで、希少な文字を書くことのできる数少ない人々とつながり、書き方を広めようとしています。Michael Stevens(マイケル・スティーブンス)とRenato Beninatto(レナート・ベニナート)がホストを務めるポッドキャストGlobally Speakingで、ブルックス氏に文字の発展と消滅について話を聞きました。

文字の起源

世界には7,000種類もの言語が存在しますが、文字はわずか120種類しかありません。なかには、文字をまったく使わない言語もあります。アフリカやネイティブアメリカンの部族が使う言語に多いのですが、こうした言語を後世に残すには、口承で伝えていくしかありません。

一説によると、文字は、商業とともに発展したと言われています。相手との交渉を記録し始めたのです。商人たちは旅先でさまざまな文化に出会い、その地で使われている言語に文字が伝わっていきました。

文字の伝播には宗教も深く関わっていました。かつて、最も高等な教育を受けていたのは聖職者で、教典を文字に起こし、写本を作成しました。布教のため、さまざまな文化圏に出向いた彼らがその教典を用いたことで、ことばの読み書きも広まっていったのです。

文字を構成する3つの要素

ブルックス氏の言う文字の3つの要素とはこうです。

「1つは音。人は書かれた記号を見て、それにひも付いた音を発します。2つ目は意味。記号にはそれぞれ意味があります。そして3つ目は形そのものです」

ある文字を読める人が1人もいなくなったら、コミュニケーションという本来の目的は失われてしまいます。発音もできなければ理解もできない。ただその形を愛でるだけ。そのとき、文字はアートになるのです。

衣服や音楽、伝統や食べ物と同様、文字と言語とは、文化を形づくるものです。ある言語の文字を読める人がいなくなれば、その文化は失われるに等しい、とブルックス氏は警鐘を鳴らします。思想の成り立ちや美意識が風化してしまうのです。これから先、文書や石板、記念碑、壁画などに読み方のわからない文字が見つかったとき、学者が必ず解読できるとは限らず、その文字を使っていた人々や文化について解明することはできないかもしれません。

文字はなぜ消滅していくのか

文字が消えていく理由はさまざまです。人口が減れば、言語も文字も使われなくなっていきます。

また、国家統一、交易促進の名目で、政府が公用語を強要した結果、少数派の言語や文字が失われるケースもあります。たとえば、インドネシアでは建国の際、17,500もの島を統一するためにインドネシア語が公用語に定められたそうです。学校ではインドネシア語が必修になり、数々の島で現地語が消滅していきました。

宗教も一因です。ある言語と文字を広める一方で、失わせることもあります。広大な領土を誇ったローマ帝国のおかげで、道路は整備され、政府と軍の公用語としてラテン語とギリシャ語が広く普及しました。キリスト教の布教も積極的に行われましたが、教典に使われたのはこの2つの言語だけでした。

米国では近年、学校で筆記体を教えなくなりました。これも文字消滅の一例です。デジタル時代の今、文字はタイピングやスワイプ、タップで入力できてしまうため、筆記体が必要な場面は少なくなりました。「ありがとう」は手書きではなく、手早くテキストメッセージやLINEで伝える時代になっているのです。

文字の創作と復活

とはいえ、手書き文字に未来がないわけではありません。たとえばヘブライ語。紀元前3世紀にはほぼ使われなくなってしまった言語ですが、19世紀から20世紀にかけて話しことばとして復活し、今ではイスラエルの公用語になっています(参考:Wikipedia)。アイルランドやクロアチアでは、一度は忘れ去られた言語が、国の歴史やアイデンティティを示す手段として見直されています。アイルランドでは、現在オガム文字が観光パンフレットなどに使用されています。クロアチアは1990年代に独立して以来、ユーゴスラビアに併合される前の、国家の威信を象徴するものとしてグラゴル文字を復活させました。

西アフリカの一部地域では、自らの言語の文字を創作する人たちが出現しました。「他の言語と同じように、自分たちも文字を持つべきだ」とひらめいたそうです。もし文字がないまま過ごしていれば、彼らは世界から孤立してしまうかもしれません。しかし文字によって世界とつながり、同時に独自のアイデンティティを確立できる可能性が広がるのです。

子供たちが未来を創る

子供たちには、未来の世代に文字や文化を伝え、守り続けていくという大事な役割があります。そのために文字を学ぶのです。ゲームは、文字を学ぶのにとても効果的な方法です。私たち大人も、かるた取りをしたり、「Boggle」、「Scrabble」といった文字を並べ替えるゲームをして言語や文字を学んできました。こうしたゲームでは、無意識のうちにスペルや発音、文字の組み合わせなどを学ぶことができます。

ブルックス氏のEndangered Alphabets Projectでは、ゲームと同じ手法を使って消滅の危機にある文字を学べるようにしたいと考えています。Kickstarterでのクラウドファンディングキャンペーンは終了していますが、http://endangeredalphabets.comで取り組みの詳細を知ることができます。また、フォローや寄付も大歓迎です。この記事のもととなったポッドキャストは、こちらから聴くことができます。

トップ画像:グラゴル文字のレリーフ。出典:The Polyglot Experience


 [編集メモ:この記事は、2017年7月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。ジル・ポラニシア による元の記事はこちらからご覧いただけます。] [編集: MLS] [o-i]

 

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