高度に成熟したローカリゼーションプログラムの現状
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高度に成熟したローカリゼーションプログラムの現状

高度に成熟したローカリゼーションプログラムの現状

高度に成熟したローカリゼーションプログラムの現状

1,000人もの翻訳者、数百万ワードの原文、「日」ではなく「時刻」で指定される納期、100以上の言語への対応。これだけでも十分に複雑なのに、切れ目なしに行われる更新。これほど大規模で複雑なローカリゼーションプログラムを、いったいどうやって管理すればいいのでしょう?

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この疑問への答えとして、Microsoft Officeの事例を紹介します。この製品のローカリゼーションプログラムは、1990年代のプロジェクトベースのローカリゼーションモデルから、今日の継続的なローカリゼーションモデルへと、飛躍的な進化を経験しました。今では、業界全体でもひときわ成熟したモデルと言えます。

コンテンツの急増に合わせたウォーターフォール型からアジャイル型へのプログラムの移行、ローカリゼーションパートナーにとっての継続的ローカリゼーションモデルの意味など、Officeのローカリゼーションには、学ぶべき点が数多くあります。

MoraviaとMicrosoft Office部門は、今年3月にアムステルダムで開催されたGALA 2017カンファレンスで、この問題をテーマに、共同プレゼンテーションを行いました。

Microsoft Office部門のPMマネージャーを務めるアイリーン・コーミカン氏は、Microsoft Officeのローカリゼーションモデルで、これまでに経験してきた変化と複雑さについて語りました。

 

新たな課題

ビジネスが拡大の一途をたどり、顧客の要求もふくらむ中、Microsoft Officeのローカリゼーションプログラムでは、課題が山積し、業務の進め方について見直しを迫られました。

  • 爆発的な拡大:対象言語の数、ワード数、プロジェクトの数、どれをとっても規模が爆発的に拡大していました。たとえば、ローカリゼーションプログラムの拡大に対処するために、Microsoft Office部門は、早急に社内翻訳を取りやめ、複数のベンダーへの外注を進めるようになりました。
  • 短納期化:もはや、月単位または四半期単位で余裕を持ったスケジュールを組める時代ではなくなりました。プロジェクトの発注は日単位になり、同じ日に次の納品を求められることすら、珍しくありません。
  • 製品が変化:Microsoft Officeは、あらゆるデバイスで利用できるようになりました。それが、機能の要件やテストなど、ローカリゼーションプロジェクトのさまざまな要素に影響を及ぼしています。

Office on Multiple Devices.png

単一のOffice製品が複数のデバイスに対応 (提供: microsoft.com)

  • 製品の提供モデルの変化:すべてがオンラインになり、店舗に足を運んで店員と会話する、といった場面は見られなくなりました。製品はすぐに届き、使える時代になったのです。
  • 顧客の要求の変化:顧客は、待ってくれなくなりました。アップデートを6か月後ではなく、明日にでも使いたいと思うようになっています。
  • 顧客中心主義が大前提に:コーミカン氏はこれを「顧客満足へのこだわり(Customer Obsession)」と呼んでいます。品質と言えば、かつてはエラーの検出数や納期厳守といった基準で判定されていました。今では、品質を決めるのは顧客です。

参考情報:


 

言語サービスプロバイダー(LSP)は今、このような環境で業務を進めています。そして、こうした課題に応えるのは、並大抵のことではありませんが、不可能ではありません。MicrosoftとMoraviaは、必要レベルの達成間近まできています。

 

業務の変化に応じたベンダーの対応

Microsoft Office部門のように、事業が急激に、劇的に進化するときは、ベンダーも同速度、同規模で業務の進め方を変える必要があります。そのためには、どうすればよいのでしょうか?Moraviaのプログラムディレクター、イワン・ルカヴスキーがこの課題について語りました。

まず、Microsoft Office部門の目標を達成するには、プログラム上の課題を解決し、継続的なローカリゼーションを実現できるように、プロセスを見直す必要がありました。

  • 作業のスピードを上げ、ヒューマンエラーを削減するために、カスタム設計のエンジニアリングチェックを導入。このチェックは、バックグラウンドでいつでも実行できます。製品の機能性に影響するエラーや、ユーザーの操作性を損なうエラーを、このチェックで検出します。
  • 再利用を促して、生産性の向上とコスト削減を促進。実際に人間の作業が必要なワード数が大幅に減少します。
  • 品質について新しいモデルを開発。効率化には必ず品質上のリスクが伴いますが、それを放置するわけにはいきません。品質保証のプロセスは迅速に機能する必要があります。勝負は時間単位です。たとえば、現在は15種類の自動言語チェックが実行されていますが、常に新しいルールが追加されています。

次に、ビジネスモデルも同様に変革を進めました。

  • ベンダーはアセットではなくサービスを提供。ベンダーは、ファイルだけではなく、プログラム全体に責任を持つようになってきました。そのため、ベンダー側の自律性が高くなり、ソースクライアント側が管理する比率は低くなっています。業務はサービスレベル契約(SLA)に基づいて進められ、議論されるのは、今や個々の取引ではなくサービスの「健全性」です。
  • ガバナンスの手法の変化。プログラムの評価基準は、エラーの数や、納期厳守の件数ではなく、納品までの期間、ボリューム、財務といったKPIに移りつつあります(コミュニケーションのトラッキングという興味深いKPIもあります。目的は、ミーティングの回数やメールのやり取りを減らすことです)。また、プログラムがダッシュボードで管理されるようになったため、プロジェクト単位ではなく、プログラム全体を把握できるようになっています。もう、Excelで現状を報告するような時代ではありません。
  • チームのマインドセットと文化の進化。 ローカリゼーションPMは、新しい職務まで担当するようになり、今ではビジネスマネージャーとも言える立場になりました。ローカリゼーションプログラムが常に変化しているため、創造性と柔軟性を求められ、迅速な対応が必須な立場です。決まったことを実行するだけではなく、画期的なプロセスを推進する責任も負っています。
  • 「顧客満足へのこだわり」に対応するプログラムへの移行。プログラムの成功と品質を決めるのは、QAのスコアではなくなりました。重要なのは、ユーザーが製品にどのような印象を抱くかです。少しでも苦情があれば、それを重大と受け止め、最優先で対処しなければなりません。顧客満足プログラムはコラボレーションを通じて進められます。ベンダーは、Microsoftとともに「顧客の声に耳を傾ける輪」に加わり、顧客ニーズに対応します。

アジャイルなコラボレーションの今後

この先、求められるものは何でしょう?Officeプログラムの進化を見るかぎり、進化のペースが落ちる気配はありません。問題は「いつ」ではなく、新しい複雑さや課題として「なに」が出現するかです。MoraviaのルカヴスキーとMicrosoftのコーミカン氏が共有する今後の予測をご紹介します。まず、クラウドソーシングの利用が進むでしょう。一例として、大学生などのクラウドリソースに、バグ検証やQA担当を依頼することが考えられます。

コンテンツの選定から品質管理まで、機械学習の果たす役割が、ローカリゼーションプログラムのさまざまな場面で大きくなるのも確実です。機械翻訳が実際に活用される機会も当然増加するでしょう。生産性は確実に向上し、大量のボリュームと短納期に対処できるからです。

どのような課題があり、それらをどのように解決するにしても、顧客とベンダーがたどる道は絡み合っています。まったく無関係ということはあり得ません。Microsoft Officeのような複雑なローカリゼーションプログラムには、創造性と柔軟性と高い信頼性を持ち、大きな規模に対応できるベンダーが求められます。Microsoft Office部門は、品質保証プロセスの向上、柔軟なワークフロー、自動化の推進、ビジネス管理における180度の方向転換といったアジャイルの要件に合わせ、ローカリゼーションプログラムを効率的に変革した最先端の存在と言えます。

Microsoft Officeの事例は、グローバルな成長戦略や最適化戦略の担当者にとって、有益なケーススタディとなるでしょう。業界リーダーの手にかかれば、大変動でさえ計画的な進化の一段階として、綿密に計算され尽くした対応に変わります。クライアントのニーズとローカリゼーションモデルが、いかにして足並みをそろえて進化していくか、今後もこの状況から目が離せません。


 [編集メモ:この記事は、2017年6月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。リー・デンズマー による元の記事はこちらからご覧いただけます。] [編集: MLS] [o/i]

 

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