ローカリゼーションにも、データにもとづく意思決定を
Share
Click here to close
Click here to close
Subscribe here

ローカリゼーションにも、データにもとづく意思決定を

ローカリゼーションにも、データにもとづく意思決定を

ローカリゼーションにも、データにもとづく意思決定を

グローバル展開にあたり、コンテンツをどこまで翻訳すべきか、どのロケールに対応するか、どの言語を優先すべきか。こうした判断は、ローカリゼーションの責任者だけでなく、マーケティング責任者にとっても大きな関心事になっています。できる・できないなどの大きな判断を左右するのは予算かもしれませんが、細かい部分の意思決定に影響を与えるのは、ズバリ「データ」です。

今回は、ローカリゼーションの内容やボリューム、タイミング、ターゲットを決めるのにさまざまなデータを駆使した3つの企業の事例をご紹介します。6月にバルセロナで開催されたLocWorldカンファレンスのパネルディスカッションで取り上げられた事例で、Moraviaのソリューション担当ディレクターErik Vogtがパネリストとして登壇しました。

 [Moravia日本語ブログを無料購読]

言語の優先順位の決め手となる売上データ

旅行観光業界では、グローバルサイトの言語とコンテンツをどう選定するかが、常に問題になります。「グローバル」サイトとはいえ、存在するすべての言語に翻訳しなければならないわけではありません。現実的でないだけでなく、なにより意味がないからです。

では、ホテル業界が翻訳を選定する基準を見ていきましょう。スターウッドホテルのグローバリゼーション担当シニアスーパーバイザーを務めるBenjamin Esch氏が、この問題を数学的に解決する手法について説明しています。2年間にわたる収益と、市場ごとの翻訳コストの総額(たとえば、ミズーリ州カンザスシティのホテル向けのフランス語翻訳)とを比較するというモデルです。

図:米国市場における日本語対応の費用対効果

スターウッドホテルでは売上データを利用して、日本語など一部の言語に対する過剰投資が発生している市場を把握(出典:LocWorldおよびスターウッドホテル)

この手法で明らかになったのは、翻訳への投資が間違いなく売上につながっているホテルがある一方で、宿泊客の使用言語すべてには対応できていないという事実でした。つまり、既存顧客に対するサービスを改善できるチャンスを、みすみす逃しているということです。これは、競合他社に顧客を奪うスキを与えていることにもなります。

たとえば、サンフランシスコのホテルでは日本語への翻訳がコストの42倍もの収益をあげていましたが、同じ日本語でもダラスでは投資収益率(ROI)をまったく達成していませんでした。ダラスでは、日本語への投資が足を引っ張る形となり、売上拡大につながるはずの言語が翻訳されていなかったのです。

こうしたデータのおかげで、ローカリゼーション部門は翻訳による利益を明らかに示したうえで、ローカリゼーションの予算を何に、どのように使えばより有効かを的確に見通せるようになりました。スターウッドホテルはこれまで、すべての市場でフランス語、ドイツ語、日本語、スペイン語の4言語に対応し、それぞれが実際にどのような成果をあげているかは考慮していませんでした。この手法を見直し、より有望な言語に予算を振り分けるようになったのです。

こうしてスターウッドホテルは翻訳に60万ドルを投資した結果、新たに宿泊客を増やし、およそ4,500万ドルを売り上げられるようになりました。

ローカリゼーション部門にとって、実務部門から戦略部門への転換を意味するこの動きは歓迎すべきものです。データにもとづくナレッジを武器に、ローカリゼーションに関する意思決定を主導できるようになり、グローバリゼーションにおけるローカリゼーション部門の存在感を示すことができるようになりました。

Webサイトのトラフィックデータから言語を選ぶ

パネルディスカッションには、旅行会社からのパネリストとして、Booking.comの翻訳・コンテンツ担当ディレクターChris Dell氏も登壇しました。40以上の言語に展開するBooking.comにとって、グローバルコンテンツは重要なアセットです。オンライン旅行代理店の大手として、翻訳が必要な言語をどのように判断しているのでしょうか。

答えは簡単、自社Webサイトの解析データの活用です。創業当初、ホテル関連のコンテンツは英語版だけでした。特定の国やロケールからのサイト訪問者数が既定のしきい値を超えると、Booking.comは翻訳サイトの展開に着手しました。オンラインデータとしては、ブラウザーの言語設定も参考にしています。

当ブログでは以前から、言語を選ぶにはWebサイトの解析が有効とお伝えしてきました。Booking.comの場合、オンラインの大手である分、トラフィック解析も有利ですが、ほかに各国チームからのフィードバック、マーケットリサーチ、潜在成長率なども参考にしています。

プレイヤーの動向データがボリュームの手がかりに

ゲーム会社Electronic Arts(EA)のオーディオビデオ・ローカリゼーション担当シニアマネージャーMario Bergantiños氏からは、同社の研究結果の発表がありました。特定のロケール向けに公開する必要があるコンテンツ量を判断するために、特定の機能の利用状況を調べたのです。たとえばフランスでは、世界的にヒットしているEAのスポーツゲーム「FIFAシリーズ」で、ストーリーモードを楽しむプレイヤーは何人くらいいるのか、といったデータを収集しました。

常時オン、常時接続が当たり前になって以来、ゲームの遊び方も変化しています。そうなれば、ゲームのローカライズ方法も変わってきて当然です。アジャイル翻訳、差分翻訳、オンデマンド翻訳が当たり前になってきました。しかし、あらゆるコンテンツを同時進行で翻訳することは、そもそも不可能ですし、必要ですらありません。大規模なゲームになると、総ワード数は『ホビットの冒険』丸一冊を上回ることもあるからです。そこで役に立つのが、ユーザーやプレイヤーの動向調査です。売上データやコスト計算に加えて、動向データを判断材料とします。EAでは、ボイスオーバーのデータも利用しているといいます。

スマートなデータがスマートな判断を生み出す

3つのケーススタディから、いくつかのポイントが見えてきました。

  • 賢明なグローバル企業は、やみくもにローカリゼーションに取り掛かることはしません。
  • まずは、データを活用してローカリゼーションの判断材料を集めます(その過程で、ROIに関する議論も進んでいることになります。ローカリゼーションの必要性を社内に売り込む必要は、もうありません)。
  • ローカリゼーションの意思決定にデータを利用する理由のひとつは、翻訳の必要なコンテンツがあまりにも多く、対象の言語も増え続けていることです。すべてを選ぶことができない以上、その選択はスマートに行う必要があります。

ローカリゼーションを進めるうえでデータを活用すべきというお話をしてきましたが、すべての企業が簡単にデータを集めてそこからインサイトを得られるわけではありません。必要なのは、どの指標を重視するべきかを見きわめることです。データを利用して言語を選ぶだけでなく、その翻訳の効果を把握することまでを目指すのであれば、特に指標が重要になります。

しかし、何よりも大切なのは、ローカリゼーションがグローバルな成長につながるということを、すべての関係者が理解すること。手段が目的になってしまっては、元も子もないということです。

{{cta(‘7e443579-9e40-4220-aea2-f972e179c660’)}}

 

 [編集メモ:この記事は、2017年8月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。ヴィジャヤラクシュミ・へグデよる元の記事はこちらからご覧いただけます。] [編集: MLS] [o/i]

 

Comments