カタルーニャ語へのローカライズで知っておくべきこと
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カタルーニャ語へのローカライズで知っておくべきこと

カタルーニャ語へのローカライズで知っておくべきこと

カタルーニャ語へのローカライズで知っておくべきこと

スペインに進出している企業であれば、ここ最近の情勢を見るうちにカタルーニャ語へのローカライズを視野に入れ始めたところもあるでしょう。実際にローカライズするかどうか、今後の政治情勢と市場のニーズを注意深く見守る必要があります。

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ともあれ、カタルーニャ語とはどんな言語なのか、その背景にある文化、ローカライズするときの注意点などを知るよい機会であることは間違いありません。そこで、Moraviaの言語サービスグループマネージャーで、カタルーニャ人でもあるアナ・コロミナスに話を聞いてみました。

まず、誰もが抱く疑問から。カタルーニャ語とスペイン語の違いとは?

ラテン語から派生している点では同じですが、それぞれ別の言語です。同じくラテン系の他のロマンス語と同様、似ている部分もあります。

しかし、発音や語彙、文法はかなり違います。カタルーニャ語は、スペイン語よりむしろフランス語やイタリア語、オック語に近い言語です。

カタルーニャ語はかつて使用が禁止されていたこともありました。こうした弾圧は言語の発展に影響したのでしょうか?

大規模な弾圧は一度や二度ではありません。直近では1936年から1975年まで続いたフランコの独裁政権下に行われ、史上最悪なものでした。公的な場や学校でカタルーニャ語の使用を禁じられ、当時私の両親は学生だったのですが、家の中でしかカタルーニャ語で話すことができなかったそうです。教育や職業訓練はすべてスペイン語で行われていました。

カタルーニャ語はこうした憂き目に繰り返しあってもなお、高度に発展しながら根強く残り、中世初期にはカタルーニャ語文学も大きく花開きました。13世紀の哲学者ラモン・リュイをはじめとする学者たちが、カタルーニャ語で数多くの哲学書や科学書を執筆したのです。さらに、Institut d’Estudis Catalans(カタルーニャ語研究所)などの公的な言語研究所や、19世紀に活躍したポンペウ・ファブラなど著名な言語学者が文法や正字法をまとめ、現代カタルーニャ語の規範を完成させました。

Wikipediaによると、カタルーニャ州に住む人々の75%はカタルーニャ語で話したり読んだりすることができるのに、書くことができる人は50%に満たないそうですね。なぜ、書ける人はこんなに少ないのでしょう?

そうですね、理由はいくつか考えられます。たとえば、

> 年配のカタルーニャ人は、学生時代に使用が禁止されていたため、カタルーニャ語の授業を受けてこなかった。本や新聞を読んだり、生涯学習を受けたりして書き言葉を勉強しても、綴りや文法がとても複雑なので、書くことにはあまり自信が持てない。
> カタルーニャ州の移民の多くは、州の公用語のどれか1つを習得するとなると、汎用性の高いスペイン語を選ぶことが多い。
> スペインの他の地域にいる移民にも、同様の現象が見られる。カタルーニャ語を学ぼうとする人々は増えているが、正規の学問として学ぶ人は少ないため、理解や会話は問題ないが、正しく書くことはできない。

補足としてお伝えしたいのですが、たくさんの移民が政府の援助による無料のカタルーニャ語講座を受講しています。社会的、あるいは文化的に地域に溶け込めるという意味でも非常によいことですが、それ以上に2世、3世が完全なバイリンガルに育っていくという点においてもすばらしいことです。

スペイン語と比較して、カタルーニャ語へのローカライズはどれくらい進んでいますか?

インターネットが普及する前は、製品がスペイン語や他の外国語からカタルーニャ語にローカライズされることはほとんどありませんでした。しかしデジタルメディアやソーシャルメディアが発展し、カタルーニャ語の専門家が「言語の正常化」を目指して学校でのカタルーニャ語教育を推進するという動きもあり、ローカライズのニーズは増えています。

ユーザー向け資料、ユーザーインターフェース、広告、マーケティングキャンペーン、製品パッケージなどを10年以上カタルーニャ語にローカライズしている大手企業も存在します。

ローカリゼーションの観点から、カタルーニャ語への翻訳時に企業が注意すべきことはありますか?

スペインでビジネスを展開する企業は、地域性やアイデンティティ、言語の多様性に関して十分に配慮しなければなりません。

カタルーニャ州は国内で最もGDPが高く、多くの顧客を開拓できるという意味で非常に重要な市場です。ですから、州内の顧客を獲得したいと望むのであれば、カタルーニャ語にローカライズするべきと言えます。

ローカライズ時の注意点を挙げてみましょう。

> マーケティング素材の翻訳やトランスクリエーションを行う場合、必要に応じて地政学的、あるいは言語的なコンサルティングを実施し、ターゲット言語のコンテンツに不用意な問題が生じないよう注意を払う。
> ソーシャルメディア全盛期の現在は、カジュアルな表現が好まれる傾向にあることを考慮する。
> バレンシア語は、カタルーニャ語の方言、あるいはバレンシア州で使われる「カタルーニャ語に似た」言語とされている。そのため、バレンシア州の人々をターゲットとしたマーケティングやトランスクリエーションを行うなら、さらに踏み込んでバレンシア語にローカライズするのもよい試みである。ただし、カタルーニャ語の代わりにバレンシア語をローカライズするのではなく、あくまで追加として行うこと。

カタルーニャ語にも、フォーマルとインフォーマルの違いは存在しますか?もしあるのであれば、違いは何段階あるのでしょうか?

二人称にフォーマルな敬称とインフォーマルな親称があります。敬称の「vos」は、昔からあるブランドなどで上質、一級というイメージを表すために使われています。親称の「tu」は、ユーザーへの訴求力が強いとされ、ソーシャルメディアなどで最近よく使われるようになりました。

どちらを使うかによって、形態や語彙はもちろん、語尾変化や動詞の活用形もすべて変えなければなりません。ですので、ブランドをどのようなトーンで発信するかを、できるだけ早い段階で決めることが非常に重要です。

カタルーニャ語では、借用語は使われていますか?

現在は、借用語をかなり柔軟に受け入れていますが、かつては、固有の言語を守るためという理由で、今よりも厳格に制限していたようです。

カタルーニャ文化は開放的で国際色豊かです。この気風は言語にも表れており、外来語を柔軟に受け入れ取り込むことで、カタルーニャ語は常に進化しています。借用語のなかには、「カタルーニャ語化」されるものも少なくありません。ソーシャルメディアによく見られるのですが、たとえば「tweet(ツイート)」は「tuit」です。

一方で、「software」など、そのまま使われる外来語もあります。

また、「hashtag」(ハッシュタグ、カタルーニャ語では「etiqueta」)や「trending topic」(トレンド、カタルーニャ語では「tema del moment」)など、そのまま使うべきか、ローカライズすべきか、意見が分かれているものもあります。

文脈を考えるうえで特に気を付けなくてはならない文法はありますか?

カタルーニャ語には男性と女性の区別があり、また、単数形と複数形で語尾が変わります。この語尾変化は、形態素やともに使われる単語の語彙によって決まります。たとえば、「new(新しい)」は男性の単数形では「nou」、女性の単数形では「nova」です。

また、カタルーニャ語には強勢のない人称代名詞(「pronoms febles」と呼ばれる無強勢代名詞)があります。これは間接目的語や直接目的語として、動詞の前に置くか、動詞の語尾につくものです。

文脈がはっきりしない場合、こうした代名詞がエラーの原因になることがあります。たとえば、単語や変数、プレースホルダーだけの文字列を、特別な指示なしで翻訳する場合などです。

例:原文が「New {0}」の場合

何の指示もなければ、{0}に入る単語の性別、単数、複数がわかりません。

「topic」(男性形単数の「tema」)なのか、「topics」(男性形複数の「temes」)なのか。あるいは「folder」(女性形単数の「carpeta」)や、「folders」(女性形複数の「carpetes」)が入るかもしれません。

ですので、文脈がわからない、もしくは何のコメントもない場合、この「New」の翻訳には 「Nou」、「Nova」、「Nous」、「Noves」と4つのパターンが考えられ、結果的に誤訳につながる可能性があります。

その他、カタルーニャ語に関して伝えたいことはありますか?

カタルーニャ語を使う人々は、かなりのデジタルメディアユーザーでもあります。Wikipediaでよく使われている言語でも上位に入っています(2017年の言語別Wikipedia純記事数で18位)。

概して、カタルーニャ人はクラウドソーシングなど新しいローカライズ手法にも寛容です。社会や文化に根差した製品であればなおさらです。

ぜひ、いろいろなビジネスでカタルーニャ語へのローカライズを進めてほしいと願っています。きっとカタルーニャの人々に大いに歓迎されるでしょう。

Esperem veure tots els vostres productes en català ben aviat!(カタルーニャ語になった製品を楽しみにしています!)


 [編集メモ:この記事は、2018年2月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。ヴィジャヤラクシュミ・へグデよる元の記事はこちらからご覧いただけます。] [編集: MLS] [o/i]

 

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