RWSグループのご紹介

Yasuhiro Saikai 西海 保洋 マーケティング 2024年12月11日 6 min read 6 min read
RWSってどんな会社?
 
皆様からよく、RWSはどのような企業なのかを聞かれることがあります。翻訳業界ではTradosという翻訳ツールの認知度が高くTradosを販売している会社、または単なる翻訳会社だと思われている方も多いのではないでしょうか。実はRWSは非常に幅広いサービスとテクノロジーを提供しており、このブログを通して皆様にどのような企業なのかを知っていただきたいと思います。
 
このブログではRWSグループの会社概要、沿革、製品一覧をまとめてご紹介します。皆様の知らない製品やサービスがあるかもしれませんので、ぜひ参考としていただければ幸いです。
 
【目次】
● 会社概要
● 沿革
● 製品一覧
● AIへの取り組み
 
 
会社概要  
 
RWSグループ(英: RWS Holdings Plc)はイギリスに本社を置く、多言語翻訳サービス・知的財産サービス・翻訳およびコンテンツ管理テクノロジーを提供している企業です。ロンドン証券取引所に上場しており、拠点数は世界34か国に62以上、全世界の従業員数は9,000名以上、言語スペシャリストの所在地は193カ国に及びます。年間32.7億ワードの翻訳を行っており、全世界に8,000社以上の顧客を持っています。また全世界トップ100ブランドのうち80社がRWSの顧客であり、スイスの調査会社スレイター社が翻訳会社の最上位分類である「スーパーエージェンシー」に位置付ける、世界最大級の翻訳サービス・テクノロジー企業です。
 
RWSの大きな特徴は、サービスのみならずテクノロジーの開発・提供も行っており、お客様にエンドツーエンドのソリューションを提供できる点です。後述しますがAIへの取り組みも積極的に行っています。
 
私たちが目指しているのは、グローバルな理解の実現です。文化の理解、お客様の理解、テクノロジーの理解を組み合わせることでお客様をさまざまな面でサポートしています。
 
 
沿革
 
RWSの歴史は翻訳業界において古く、1958年創業のM. H. Randall & Partner社(1958年創業、翻訳会社)とWoolcott & Co(特許調査会社)が1982年に合併しRWSが誕生しました。その後多くの買収を行い、2017年にチェコのモラビア社(Moravia)、2020年にイギリスのSDL plc社を買収したことで翻訳ビジネスに大きな広がりがもたらされました。SDLの製品であるTrados、Tridion、Language Weaver、Contentaなど各種テクノロジービジネスを保有することとなり、サービスとテクノロジーを兼ね備えた企業となります。  
 
現在日本においては、株式会社RWSグループ(特許翻訳サービス、特許データベース、特許調査)とSDLジャパン株式会社(翻訳サービス、翻訳テクノロジー、コンテンツ管理システム)が存在するかたちとなりますが、RWSという1つのブランドに統一されています。RWSは日本でビジネスを開始してから25年以上が経っており、自動車、特許事務所、電子機器、航空、重機、IT、医薬、医療機器、エンタテインメントなど、多くの業界で実績を持っています。
 
それでは続いて、RWSが展開するサービスとテクノロジーをまとめてご紹介します。
 
 
製品一覧
 
 
【多言語翻訳サービス 
 
RWSは業界最大の社内翻訳リソースを持ち、自社開発の翻訳テクノロジーを活用しながら高品質な翻訳を実現しています。40,000人を超える言語スペシャリストにより650の言語ペアをカバーしており、自動車、産業機器、建設機械、電子機器など工業分野に特化した翻訳サービスでは、マニュアルやWebサイトを中心に幅広いコンテンツを取り扱っています。テクノロジーを自社開発しているRWSだからこそできるエンドツーエンドの「翻訳業務コンサルティング」や「MTPE導入支援」も多くの企業に評価されています。

また規制やルールが厳しい特定の業界においても、専門チームによる正確な翻訳サービスを展開しています。

年間195,000ワード以上の特許、法務、IP関連文書を翻訳し、WIPO出願数トップ20社のうち19社がRWSのサービスを選んでいます。技術と言語、特許制度に精通したスペシャリストが多数おり、万全の体制で高品質な翻訳を行っています。PCT加盟国全ての言語への翻訳に対応しています。DTPにも対応し、各国特許庁に直接出願が可能なフォーマットでの納品も可能です。

ライフサイエンス(医療、医薬)
ライフサイエンス分野では、医療機器メーカー向けにEUMDRに対応した多言語翻訳リソースを業界最大級の規模で保有しています。専門チームがISO13485に準拠した文書管理を徹底し、正確で高品質な翻訳を実現します。また製薬会社やCRO向けには、IB、Protocol、CTD、PVなど、文書タイプごとに最適化されたワークフローを構築し、それぞれのタスクでは厳密な専門家による品質管理を行っています。
 
 
 翻訳テクノロジー 
 
・翻訳支援ソフトウェアTrados Studio
世界中で個人から企業まで幅広い翻訳のプロに使用されている、業界標準の翻訳ツールです。翻訳メモリと用語ベースというデータベースを基に翻訳データを蓄積・再利用し翻訳業務を効率化します。また生成AIや機械翻訳とも連携が可能で、さらなる効率化と高品質な翻訳を実現します。デスクトップアプリケーションとクラウド環境をセットで使用できます。
 
・翻訳管理システムTrados Team/Trados Accelerate/Trados Enterprise
社内の翻訳チームからエンタプライズ企業まで、幅広い翻訳チームに対応するクラウドベースのコラボレーションツールです。複数ユーザによる同時作業、リソースのリアルタイム共有、ワークフローの自動化とカスタマイズ、プロジェクト管理、APIによる他システムとの連携など、様々な機能を兼ね備えています。Trados Studioともシームレスに連携が可能です。
 
・機械翻訳Language Weaver
安全性と拡張性に優れた、企業向けのAI機械翻訳ソリューションです。英語、日本語含むアジア言語、欧州言語、中東言語など130以上の言語、また4000を超える言語の組み合わせに対応しています。辞書機能を備え、さらにAdaptiveMTというオプションを選択することで、お客様のご自身のデータで翻訳エンジンを学習させ翻訳精度を向上することが可能です。クラウドとオンプレミス、どちらでの導入にも対応しています。
 
 
 コンテンツ管理システム(CMS) 
 
・コンポーネント CMSTridion Docs
世界標準のXML規格「DITA」に対応する世界・国内シェアNo.1の技術文書管理システムです。製造業でのマニュアル・取説の制作や、社内向けのナレッジベースなどに多く活用されています。構造化によるコンテンツの再利用や、ワンソースマルチユース(例:XMLからPDF、Web、モバイルApp、チャットボット)によりコンテンツ制作時間とコストを大幅に削減させることが可能です。作業の更新漏れ、意図しない更新、データの取り間違いを回避する品質機能、トレーサビリティーの管理、権限管理など厳しいコンテンツの品質要求にも柔軟に対応します。
 
・ウェブ CMSTridion Sites
エンタプライズ企業向けの多言語に対応するウェブ CMSです。グローバル企業において企業ブランド・メッセージをすべての言語で統一することは非常に重要ですが、これを実現するには時間とコストの面で多くの課題があります。Tridion Sitesの大きな特徴の1つである継承機能では、元となる言語のページ(親)に含まれる様々なコンポーネント(コンテンツ、レイアウト、サイト内アプリなど)を各言語のページ(子)に自動的に継承することで、短期間・低コストで多言語展開を実現します。グローバルで大手製造業、航空業、化学、ホテル、小売、飲食、金融機関など数100社に利用されています。
 
S1000D対応技術文書管理システムContenta Publishing Suite
航空機、ヘリコプター、船舶、防衛業界などのための世界標準文書規格S1000Dに対応したコンテンツ管理システムです。大手航空機メーカー、装備品メーカーなどに採用されています。

 
 特許ソリューション 
 
・特許調査
特許調査の専門チームが、無効資料、新規性、実施使用証拠等の各種調査を予算や納期に応じて対応します。クラウド調査という世界中に所在するサーチャーのネットワークを活用した唯一無二の調査サービスも提供しています。
 
・特許外国出願支援inovia
オンラインでの特許翻訳見積取得、発注、出願までを進行、管理することのできるプラットフォームです。外国出願をミスなく済ませ、外国出願にかかる事務的負担や、作業時間、コストの削減を実現します。
 
・特許年金管理
特許年金管理サービスでは、2回目までのリマインダと請求書に差額がなく予算管理が容易、更新月の4ヶ月前からリマインダの送信を開始する余裕のある期限管理、RWSが年金納付を代行するため前払いが不要というメリットがあります。お客様の貴重な特許ポートフォリオを、時間効率とコスト効率の高い方法で確実に保護します。
 
・特許データベース/ワークフローOrigin/PatBase/IPShare/Legal StatusTracker
知財部、研究開発部門、特許事務所、特許調査会社などに利用いただいている包括的なグローバル特許データベースや、アラート配信、情報共有に特化した知財ソリューションです。ツールに関しては日本専任のカスタマーサポートをご利用できます。
 
 
AIへの取り組み ~人間と機械のコラボレーション~
 
RWSは専門的な知識を持った言語スペシャリストを多く抱えていると同時に、テクノロジーの力を信じておりAIへの取り組みも積極的に行っています。今後重要となっていくのは、専門知識を持った経験豊富な人間の知性と、AIなどのテクノロジーの融合です(Genuine Intelligence™)。これにより世界中のオーディエンスに向け、最適化されたコンテンツを迅速に提供することができるようになるのです。
 
 
Evolveはこれを具体化したRWS独自の言語処理ソリューションで「機械翻訳(Language Weaver)」「翻訳管理システム(Trados Enterprise)」「言語スペシャリストによる品質評価」「大規模言語モデル(LLM)」を組み合わせています。
機械翻訳結果を出力後、個別に調整されたLLMを活用することで修正が必要な箇所を特定し、修正を繰り返し、ほぼリアルタイムで人間の翻訳品質に近い翻訳結果を自動的に出力します。このフローは自動化されており、人間が翻訳プロセスに介入する時間を最大限に短縮します。これにより、言語スペシャリストは特定の分野や文化に関する専門知識を、必要な箇所に優先して適用できるようになります。

Evolveを使用することで翻訳サプライチェーン全体で最大65%の効率化が期待でき、まさに翻訳業界の大きな飛躍の象徴と言えます。2024年度には、EvolveはAI Breakthrough Awardの「Machine Translation Innovation Award」を受賞しています。(AI Breakthrough Awardsは、人工知能に関連するテクノロジー、サービス、企業、製品の卓越性を評価するプログラムです)
 
またEvolveに限らず、TradosやTridionなどのテクノロジー製品にもAI機能を搭載し、生成AIを活用したさらに効率化できるツールを開発し続けています。
 
 
さいごに
 
ここまで会社全体についてまとめて紹介をさせていただきました。皆様がRWSグループという企業について、より知っていただく機会となれば幸いです。グローバルな理解の実現を目指し、RWSはこれからも革新を続けます。
Yasuhiro Saikai
制作者

西海 保洋

マーケティング

セールスの経験を経て、現在翻訳サービスとテクノロジーのマーケティングを担当。

この執筆者の全記事: 西海 保洋